もしもの世界



「うふふ、弟くん、捕まえた」
そう言って音姉は、僕を押し倒した。
「お、音姉、何を……んんっ」
僕の言葉をさえぎるように、音姉の唇と僕の唇が重なる。
「……うふふ、弟くん」
しばらくして、二人の唇が離れる。
音姉の顔は、怪しい笑顔で満ちていた。
「音姉、なんでこんな……」
「なんでって……決まってるじゃない」
一呼吸おいて、音姉が続きを口にする。
「弟くんは……私のものだもの」
ドクンと、僕の心臓が飛び跳ねた。
「弟くんも、嫌じゃないよね?」
僕の答えなど聞かないでもわかるといった様子で、音姉は僕に問いかける。
実際、僕の答えはすでに決まっていた。
「……嫌じゃ、ないよ」
「うふふ、嬉しいよ、弟くん」
心底嬉しそうな顔で、音姉は怪しく笑った。
「それじゃあ、弟くんを私のものにしないとね」
そう言って音姉は、近くに置いてあった道具を手に持った。
「な、なにをするの、音姉?」
「すぐにわかるよ、弟くん」
見た感じ、それはバイブのように見えた。
見えたと言ったのは、僕がバイブというものを雑誌とかでしか見たことがないからだ。
「いくよ、弟くん」
「んぁ!」
僕に近づいてきた音姉が、僕のお尻の穴にバイブを突っ込んだ。
初めての感覚に、僕は思わず声をあげてしまった。
「どう? 弟くん?」
「どうって言われても……」
お尻の中に異物が入っている感覚に僕は戸惑っていた。
「気持ちよくない?」
「よくわからないよ」
お尻にバイブが入っているというのに、僕はひどく冷静だった。
音姉が近くにいるから安心しているのだろうか。
「すぐに気持ちよくなるよ」
そう言うと音姉は、おもむろにリモコンのようなもののスイッチを入れた。
『ブブブブブブ』
「はひゃぁっ!」
どうやらそれがバイブのスイッチだったらしく、急に動き出したバイブの感覚に驚いた僕は、 再び情けない声をあげてしまった。
「うふふ、弟くん、女の子みたいな声だね」
対して音姉はといえば、冷静に僕の様子を分析しているようだった。
「お、おと……ねえ……おね、がい……ふぁっ! とめ、て」
止めどなく襲ってくる快感に耐えながら、必死に音姉に懇願する。
しかし、音姉の方は、一向にやめようとはしない。
「ダーメ、やめてあげない」
「そ……んな、おと……ねえ……ふぁっ! おねが、い……と、めて……」
僕がお願いすればするほど、心なしか音姉は喜んでいるようだった。
「弟くん、かわいい……」
「か、かわいい……って……んくっ!」
もう、懇願の声なんだか快感の声なんだか自分でもよくわからなくなってきていた。
「やめてあげてもいいよ?」
「ほ、んとう……? おとね、え……あふっ!」
怪しげな微笑みで、音姉はそう言った。
僕の方はといえば、これ以上続けられると音姉の前でイッてしまいそうだった。
「一生私の性奴隷になると誓ってくれたら、やめてあげる」
「せ、性奴隷、って……ふぁっ! そんなの……」
いきなり性奴隷になれと言われた僕だったが、心底嫌だとは思っていなかった。
音姉の性奴隷ならいいかもしれないと思い始めていた。
「どうなの? 誓うの?」
「はひゃぁぁっ!」
僕からの答えが返ってこないことに業を煮やしたのか、音姉はバイブのスイッチの出力をあげた。
いきなり快感の勢いが増したことに驚き、僕は今までで一番大きな喘ぎ声をあげてしまった。
「ち、誓いますぅぅ! だからやめてぇぇ!」
「うふふ、よく言えました」
僕の答えに満足したのか、音姉はバイブの電源を切った。
「ハァ……ハァ、ハァ」
ようやく収まった快感の波だったが、僕の呼吸はまだ乱れたままだった。
「どう? 気持ちよかった?」
「……うん」
音姉の問いかけに、僕は小さな声で頷いた。
実際、周りが見えなくなるほど気持ちよかったのも確かだった。
「よかった。それじゃあ弟くん。これを付けてくれるかな?」
そう言って音姉が取り出したのは、犬とかが付ける大きめの首輪だった。
「これは……」
音姉がなんのために首輪を出したのかわからなかった僕の様子を見て、音姉が説明を加える。
「これは弟くんが私の性奴隷である証だから、絶対に外しちゃダメだよ?」
性奴隷という言葉に多少の違和感を感じてはいたが、不思議と嫌な感じはしなかった。
僕は、少しだけ迷ったのち、音姉の言葉に頷いた。
「それじゃあ確認よ。弟くんは私のなにかな?」
僕と音姉のこれからの関係を確認するように、音姉は僕に質問する。
僕は、おそらく音姉が待ち望んでいるだろう言葉を口にする。
「はい……僕、桜内義之は……朝倉音姫様の性奴隷です」
「よくできました」
僕の答えに、音姉は心底嬉しそうな表情を見せてくれた。
今ここに、姉弟だった二人の関係は終わりを告げ、主(あるじ)と性奴隷という新しい関係が成立した。
「うふふ。これからもずっと一緒だよ、弟くん」
怪しさと優しさが入り交じった顔でそう言った音姉は、今までで一番綺麗だった。


これからもずっと一緒だよ、音姉。

終わり



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